
企業の再エネ戦略が再定義される:スコープ2改定の全貌と実務対応

GHGプロトコル改定案が示す新要件:1時間マッチングと地理的整合性の重要性
GHGプロトコルにおけるスコープ2会計ルールの改定案が公表され、企業が再エネ利用をどのように示すべきかについて、これまでの前提が大きく変わる可能性が出てきています。
特に、1時間マッチングの必須化、取引可能エリアの厳格化、FIT/FIP電源の扱い見直しなど、実務に直接影響する論点が議論されています。
本記事では、改定案の主要ポイントと、企業が今から備えるべき実務的アクションを整理します。
1. スコープ2ルール改定案が示す大きな方向性
① 1時間単位での再エネ発電量と消費電力のマッチングが求められる(Hourly Matching)
改定案では以下の考え方が示されています:
- ロケーション基準:可能な場合は 1時間排出係数 を使用する
- マーケット基準:使用電力とEAC(証書)の時間帯を 1時間レベルで一致 させる
これにより、従来一般的だった**「年間ベースでの再エネ100%主張」**は難易度が大幅に上昇します。
② 取引可能エリア(地理的整合性)の厳格化
改定案では、再エネが物理的に供給可能な範囲に基づいて算定することが重視されています。
日本では、送配電エリア単位での整合性が重要になる可能性が高く、広域での属性証書のみでは基準を満たせないケースも想定されます。
③ FIT/FIP電源はプロラタ方式で扱われ、専用主張が困難に
FIT・FIPなどの公的支援電源は「公共的な資源」とみなされるため、企業が「自社専用」と主張できる範囲は限定的になります。
そのため、今後は以下の要素がこれまで以上に重視されます:
- 追加性(Additionality)
- 専用性(専用電源の確保)
2. 改定案が企業にもたらす影響
改定案は最終決定ではないものの、方向性は明確であり、企業には以下のような影響が出始めています:
- 従来のEAC中心戦略だけでは報告要件を満たせなくなるリスク
- 時間整合性・地理的整合性がない調達に対する内部監査リスク
- 顧客・投資家からの透明性要求の高度化
- 追加性の弱い調達モデルからの移行圧力
特にグローバル企業では、スコープ2の開示基準が厳格化しており、アジア拠点でも早期の対応が競争優位に直結します。
3. 企業が今から準備すべきこと
1)1時間ベースのデータ管理・マッチング体制の構築
- Hourly matching に対応できるシステム準備
- 監査可能なデータ・証跡の整備
2)送配電エリア単位でのPPA設計
- 9〜10送配電エリアごとに整合性を確保したPPA設計
- “証書だけに依存しない” 実質供給可能性の裏付け
3)追加性を備えた再エネ電源の確保
- PPA締結後に構築される専用電源モデル
- FIT/FIP依存ではない追加性の高い電源の導入
4)調達戦略のリスク再評価と再設計
- 改定案シナリオに基づくリスク分析
- 国・地域ごとの調達手段の見直し
4. ピーク・エナジー・ジャパンの対応力
ピーク・エナジー・ジャパンでは、議論されている改定案の方向性にすでに実務レベルで対応できる体制を整えています。
- 1時間ごとのマッチングに対応したシステム
- PPA締結後に“顧客専用”の追加性電源を開発・構築
- FIT/FIPに依存しない高追加性モデルの提供
- 送配電エリアに基づく地理的整合性のあるPPA設計
- 新ルールを見据えたリスク評価・調達戦略見直しの支援
企業にとって重要なのは、改定が正式化される前から不確実性をコントロールすることです。
5. スコープ2改革の時代に、企業が取るべき次の一手
GHGプロトコル改定は、再エネ調達の考え方そのものを再定義する可能性があります。
“EACを買えば良い”という時代は終わり、今後のキーワードは次の3つです:
- 実質供給
- 追加性
- 時間整合性(1時間マッチング)
再エネ調達モデルの見直しや、スコープ2報告の高度化をご検討中の企業様は、ぜひお問い合わせください。
ピーク・エナジー・ジャパンが、実務レベルでの具体的な支援をご提供します。